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列王記第一6章-7

2024年8月21日

列王記第一6章-7(6:28-38)
=本章の内容=

❾神殿戸口と内庭❿神殿の完成

=ポイント聖句=

37-38,第四年のジブの月に、主の宮の礎を据え、第十一年のブルの月、すなわち第八の月に、神殿のすべての部分が設計どおりに完成した。七年かけて建てたのである。

=注目聖句①=

31,ソロモンは内殿の入り口を、オリーブ材の扉と五角形の戸口の柱で作った。(新改訳2017)

31,ソロモンは内陣の入り口にオリーブ材の扉を付けた。壁柱と門柱は五角形であった。(新共同訳)

31, And for the entrance of the oracle he made doors of olive-wood: the lintel and side posts were the fifth part of the breadth of the house.(DBY)【直訳】そして、神託所の入り口にはオリーブの木の扉を作りました。家の幅の5番目の部分は、縁石と側柱でした

31,And for the entering of the oracle he made doors of olive tree: the lintel and side posts were a fifth part of the wall(kjv)【直訳】そして、神託の入り口のためにオリーブの木の扉を作りました。縁石と側柱は壁の5分の1でした。

31,For the entrance of the inner sanctuary he made doors of olive wood, the lintel and five-sided doorposts.(NASB95)【直訳】内なる聖域の入り口には、オリーブの木、縁石、五面の門柱で扉を作りました。NASB95=New American Standard Bible 1995年版

※日本語訳では全て「柱が五角形」と訳されている。ところが英語版ではDBYやKJVの様な伝統的聖書では形状を意味していない。そこで米国での複数の聖書研究を見てみると当時五角形の形状をした像作物は見られないため数値としてとらえる方が妥当だとの見解が多数を占めていた。仮にKJVの「壁の5分の1」という訳をとると内殿の壁20キュビトの5分の1=4キュビト(1.8m)となる。

=注目聖句②=

36,それからソロモンは、切り石三段と杉の角材一段の仕切りで内庭を造った。(新改訳2017)

36, また内庭を造り、切り石を三列、レバノン杉の角材を一列重ねて据えた。(新共同訳)

36, And he built the inner court of three rows of hewn stone, and a row of cedar-beams.(DBY)【直訳】そして、彼は三列の切り石と杉の梁の列の内庭を建てました。

36, And he built the inner court with three rows of hewed stone, and a row of cedar beams.(KJV)【直訳】そして彼は内庭を、三列の切り石と一列の杉の梁で建てました。

※「梁」とは「建物などの構造物で、柱などを支点として水平に渡す構造部材」のこと。屋根や上階の床の重さを支えるために横木を添えるのが一般的で、この横木の総称が「梁」。屋根や床などの荷重を柱に伝える役割がある。ここで作られた内庭とはいわゆる「ポーチ」のことでうっぱん住宅であれば玄関から突き出ているスペースのこと。新改訳2017で「三段」と訳された箇所は新共同訳や英語訳では「三列」となっている。この切り出された石が横たわっていたのではなく縦に立てられていたとする方良いと思われる。

=黙想の記録=

❾29-34節:神殿戸口と内庭・・・なつめ椰子は詩篇92篇でも謳われているように繁栄の象徴とされる木です。年輪のない木材としてもまたその実も食用とされる実用性の高いものです。ケルビムはイスラエルの平和を椰子の木はイスラエルの繁栄を花の模様はイスラエルの命の継続(永遠の存続)を表現したものです。ところで31節で「五角形の戸口の柱」と日本語で翻訳された部分を「枕木と門柱は壁の5分の1」と数値で捉えると「1.8mの枕木と門柱」ということになります。つまり縦横1.8mの正方形の入り口であったということになります。至聖所は階段で上った先にあり下から見上げた位置にあります。入口の戸は蝶番を使った片方2枚両方で4枚の観音扉になっていました。扉はオリーブの木だったので重量があり、この扉は空けるには相当力が必要でした。比較的短い寸法で大祭司が帽子を被っていれば頭を下げて入ることになります。(年に一度の「大贖罪日」(ヨムキプール)に大祭司は至聖所に入り「契約の箱=アークのふた」(償いの座)に動物の血をふりかけました)。神殿外から本殿(聖所)に入る場合は「四角形」とあるところからKJV風に解釈するなら40キュビトの4分の1で10キュビト4.5mの四角形となります。ここも入口の戸は蝶番を使った片方2枚両方で4枚の観音扉になっていました。ここもオリーブの木だったので重量があり、この扉は空けるには相当力が必要でした。その為この入り口は恐らく複数人で開けなければならなかったと思われます。神殿入口の巨大な観音扉を開けた先に内庭を作ったとありますが言わばポーチの様な場所です(Ⅰ歴代誌28:11)。幕屋にはこの部分に当たるところはありません。これもまたソロモン流の付け足し建築です。「祭司の庭」(2コリント4:9)または「上庭」(エレミヤ36:10)と呼ばれていた部分です。わざわざ切り出した石柱(推定7.5m)を両側三列に聖所から突き出して並べられその上に杉の角材を乗せて造られていました。この至聖所・聖所・内庭の建築様式は古代メソポタミアのシリア領アインダラにあった「アインダラ神殿(BC1300)」に酷似しています。このアインダラ神殿の内部の壁の装飾には羽の生えたスフィンクスに似た人頭獅子や花が彫られていました。つまりソロモン神殿の構造は始めから異教徒の神殿様式に似せて造ったと言えるのです。

❿37-38節:神殿の完成・・・37・38節のこの月の名前に作者のソロモン神殿に対する評価が記されているように思えてなりません。「ジブ」つまり明るさに満ち希望にあふれて神殿建築を始めたのですが、木の葉が枯れて落ち始め野菜全体が垂れ下がって枯れることを意味する「ブル」に神殿建築は完了したというのです。「イスラエルの人々にとって『神殿建築』はソロモンに信仰の息吹を与えイスラエルに信仰を土台にした明るい未来をもたらす様に見えていた。しかし結果的にはイスラエルの信仰の灯火を消し去る大きな災いを引き起こす原因となってしまった。」との苦々しい思いを「ジブ」と「ブル」という二つの月の名前を使って表現したかったと思えるのです。列王記の作者にしてバビロン帝国のエルサレム攻撃を目撃して来たエレミヤの目には「ソロモンの神殿建築は主なる神様への正しい信仰心から始まったものではなく、ソロモンの権勢をイスラエル内外に誇示するための道具に過ぎない」と主張したかったのです。

[大庭]神殿に関しては様々な青写真が描かれています。この大庭に関しても諸説ある様です。「9,高価な石で造られていた」とありますからこの空間にいるだけでも荘厳な雰囲気が伝わってきます。ただ神殿の寸法の2倍程度ですから考えると東西方向に120キュピト南北40キュピトとすると63.96m×21.32m= 1356m2 で410坪程度になります。イメージ画像を参考にすると大庭には石畳を敷き詰めておりその大庭は三段の階段で上る回廊が建設されていました。この広さを例えると東京ドームの100分の3です。千人の人々が集まれば窮屈な空間です。つまり高い塀で囲まれた神殿はイスラエル人の極一部の人々しか入ることはできなかったわけです。つまり人工的な遮蔽物によって神殿はいよいよ近寄りがたい存在だったわけです。移動する幕屋があった時代では、人々は主なる神の存在を目の当たりにすることができていたのです。こうしてソロモンは民衆から信仰を遠ざける要因を作り上げてしまったと言えるのです。

=注目語句=

語句①なつめ椰子(29):英語palm tree;ヘブル語ティモラー・・・果実はデーツと呼ばれ、北アフリカや中東では主要な食品の一つになっている。樹高10m以上直径1m未満。詩篇92:13-14には繁栄の象徴として謳われている。

語句②五角形の戸口の柱(31):英語;ヘブル語アイ―ル・メズザー・ハミシー[枕木・門柱・5番目]

語句③内庭(36):英語inner court;ヘブル語ペニミー・ハツェール[内側・法廷(囲い)]

語句④ジブの月(37):英語Zif;ヘブル語ズィブ[明るさ]・・・2番目のヘブライの月で4月から5月に相当

語句⑤ブルの月(38):英語Bul;ヘブル語ブォル[増加]・・・8番目のヘブライの月で10月-11月に相当

 

列王記第一

Posted by kerneltender