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列王記第一6章-5

2024年8月21日

列王記第一6章-5(6:14-22)
=本章の内容=

❻神殿内部の壁❼金箔で覆われた本殿と内殿

=ポイント聖句=

15,彼は神殿の内側の壁を杉の板でおおい、神殿の床から天井の壁に至るまで、内側を板でおおった。なお神殿の床は、もみの板でおおった。

22,神殿全体を隅々まで金でおおい、内殿に関わる祭壇も全体を金でおおった。

=黙想の記録=

❻14-16節:神殿内部の壁・・・神殿の外壁は石灰岩で積み上げましたが、天井・内壁には杉材を床にはもみ材を利用しています。ここで不思議に思うのは、この神殿内には燭台や香炉があり火を使う場面が多いのになぜ可燃性の木材を使うのだろうということです。誤って引火はしなかったのでしょうか。引火しないように細心の注意を払うわけですが、仮に焦げてしまっても木材なら簡単に補修ができるのです。さらに材木を内装に使った理由はイスラエル独特の気候にもあります。エルサレムは地中海性気候に区分されており、夏は30℃まで上昇しますが乾燥しているので凌ぎやすいのです。石材は熱を遮断するのでひんやりしているので快適な空間の筈です。ところが冬は5℃前後で寒く雪が降る場合もあります。神殿内に暖房器具があればまた別ですが、石材が剥き出しの状態の神殿は耐え難い寒さになるはずです。イスラエルは様々なイベントがこの神殿を中心に一年中あります。この夏冬の寒暖を上手に凌ぐのに木材は打ってつけなのです。しかし大きな理由は、ソロモンなりの律法に関する拘りだったのでしょう。つまり石材に「鉄を使って装飾を施すのは律法に抵触する(申命記27:5)」ことです。ならば木にノミなど使って彫刻によって装飾を施すならそれは律法に抵触しない事になるわけです。ここでもソロモン流の法の下を掻い潜る悪知恵が働いたのではないでしょうか。蛇足になりますが杉の木は爽快な香りのするものです。この辺りもソロモンの美的センスに合致したのではないでしょうか。

❼17-22節:金箔で覆われた本殿と内殿・・・「18, 瓢簞模様と花模様が浮き彫りにされていて」とありますが、これらの絵柄はエジプトとペルシャの宮殿でよくみられるものです。神殿内部を描いたイラストを見ると椰子の木や四つ足で羽の生えているケルビムまで彫刻されているのを見ます。また金箔を貼り詰めていますが、この金箔を作り出す技術も壁や床や天井あるいは調度品などに貼る技術もエジプト(BC1200年頃から)由来の物で元々のイスラエル人の技術ではありません。当時の装飾技術の粋を集めたのがソロモン神殿です。なぜこんな手の込んだことをしなければならなかったのでしょう。殺風景な幕屋の様子を踏襲する訳にはいかなかったのでしょうか。ここにもソロモンがイスラエル内外にソロモン自身の威勢を誇示する様子が見て取れるのです。本来異教徒が入れる筈のない神聖な場所の筈ですがソロモンはイスラエル民衆だけではなく異国からの代表者にも神殿を見せた(シバの女王:Ⅱ歴代誌9章)ことでしょう。使われた金は約34tと推定されています。現在の金相場に換算すると約13000円/g×34000000g=4兆4200万円(日本の国家予算112兆円の1.1%)となります。建築期間7年間でこれだけの金を集めてくるのです。イスラエル全部族の所有する金を集めるくらいでは全く足りません。朝貢外交で諸外国から強制的に貢がせたとも思われるのです。このソロモンの政策もまたユダ族以外の11部族の反感を買うきっかけとなるのです。

=注目語句=

語句①瓢簞模様(18):英語knops;ヘブル語ペカイーッム[瓢箪模様,つぼみ]

語句②花模様(18) :英語open flowers;ヘブル語パトゥール・スィス[開いた花芽]

語句③浮き彫り(18):英語was carved;ヘブル語ミクラァッ[彫刻した]・・・6章に3回も使われている(6:18; 6:29; 6:32;)

語句④かぶせる・おおう(21・22):英語overlaid;ヘブル語サファー[覆う,塗る,敷く]

 

[使用されていた木材について]

①杉の木・・・樹高40–60m幹径4–5mになる。他の木と比較すると柔らかいので加工しやすい。保湿性がある為冬は暖かく夏は涼しい環境を造ることができる。調湿効果があるので腐敗やカビにも強い。水分を内部に含有し燃えにくい性質を持つ。

②樅ノ木(もみのき) ・・・樹高30m以上幹径は1.5 m以上になる。耐久性は乏しいものの、材が白くて清涼感があること、柔らかで加工しやすいこと、ネズミや害虫に強いことから棺桶、卒塔婆、葬祭具の材料に、また材に匂いがないことや抗菌作用があることから、おひつ、箸、まぼこ板、茶筒、包装など食品の容器に使われる。樹齢は約300~500年。

列王記第一

Posted by kerneltender