列王記第一6章-3
列王記第一6章-3(6:8-10)
=本章の内容=
❹階段・屋根・脇屋
=ポイント聖句=8,二階の脇間に通じる入り口は神殿の右側にあり、螺旋階段で二階に、また二階から三階に上るようになっていた。
10,神殿の側面に脇屋を建て巡らし、その各階の高さは五キュビトにして、これを杉材で神殿に固定させた。
=黙想の記録=❹8-10節:階段・屋根・脇屋
【階段】二階三階の脇屋に上るためには階段を使います。ところで日本語訳聖書はこの階段を「螺旋階段」と翻訳しています。ところが螺旋階段は中世以降のものなので「螺旋階段」がこの当時に存在したとは思えません。脇屋は幅5キュピト(約2m)なので階段は人一人が上れるくらいの筈です。仮に2m幅に螺旋階段を設けた場合幅広の大きな調度品を持ち上げるのは難しいのです。やはり直線階段と思われます。
【屋根】新改訳2017版で「屋根」と訳されている部分はその他の日本語訳や英語訳では天井と訳されています。ヘブル語では「家を覆っていたもの」となっています。因みにギリシャのパルテノン神殿(BC431年完成:ギリシャ)の屋根は厚板の上に薄い石灰岩の板を重ねてあったそうですが、パルテノン神殿の中には太い支柱が何本もあり石の屋根を支えるのに十分な強度があったのでそれが可能だったのです。またエジプトのアブ・シンベル神殿も屋根には石材が使われていますが、神殿内にはやはり太い支柱が存在します。ところがソロモンの神殿には神殿の中に柱はありません。つまり屋根は石材ではなく木材だけだったと思われるのです。ところが様々な方が描かれたソロモン神殿を見ると屋根部分を地面に立っている一般民衆には目視できない様になっています。つまり下にいる一般民衆は屋根の素材が他国同様石材と勘違いするようになるのです。
【脇屋】この脇屋には神事に関わる調度品等を保管されていたとされていますが内容までわかりません。中の構造は不明です。「10,神殿の側面に脇屋を建て巡らし、その各階の高さは五キュビトにして、これを杉材で神殿に固定させた。」とありますが、「石材の部分に材木を固定させる」には予め石材の方に。ところで大変穿った見方をすると、この脇屋は調度品の保管だけの用途ではなかったかもしれないのです。仮に脇屋の天井部分まで上れたとすると神殿屋根まで到達できることになります。すると神殿屋根が破損や雨漏りするような事があれば取り換えが容易な位置にあることになります。
まとめ・・・細部までこだわって建築されているソロモン神殿なのですが、当時の技術力ではエジプトなどの建築物と比較するとかなり見劣りするものなのです。しかし当時のイスラエル人を衆目させるには十分とソロモンは考えたのです。またエジプトの建造物より大きなものを造ればエジプトに対抗する勢力とも見なされてしまうので控えめに作ったとも言えるのです。しかしこの程度の建築物を建てられる程イスラエルには文明文化が発達していることを諸外国に示すには十分だったとも言えるのです。こうしてソロモンがこの規模の神殿をこの程度の内容で造り上げることができ能力こそソロモンの知恵と言えるのです。つまり国の威信を内外に示すには程よいもの。それがソロモン神殿なのです。姑息な人間の知恵は創造主なる神様の知恵の前には恥ずかしい程貧弱だったのです。ですから、この「ソロモンの神殿建築の様子」を現代のクリスチャンや教会に無理やり適応するのは如何なものでしょうか。
語句①螺旋階段(8):英語winding stairs(KJV);ヘブル語ルール・・・階段,曲がりくねった階段
階段または梯子のある軸または密閉された空間
※当時の階段は全て直線で現在のような螺旋階段はエジプトの建造物にも見当たらない。従って1階から2階へは壁に沿って東から西へ上る。すると上り切ったところで身体は西を向いている。2階から3階へ行くときには回れ右してまた東から西へと上っていく。つまり身体をねじって上ることになる。「TheBibleForStudents.com」の「ソロモン神殿の青写真(東西が逆)の入り口側上部に描かれた「ACCES」が階段入り口でその右側に直線状の階段が描かれている。また「Messages of Christ」の「Solomon’s Temple Explained」を視聴すると直線状の階段が東から西へと2か所に見える。
語句②屋根(9):英語ceiling(NLT),covered house(KJV);ヘブル語サファーン・バイヤス[家を覆った]
語句③雨水溝の列(9)(梁と板:新共同訳):英語beams and boards(KJV) beams and planks(NLT);へブル語ゲブ・セデラ―[梁・厚板] ※梁は建物などの構造物で柱などを支点として水平に渡す構造部材・・・新改訳2017では「雨水溝の列」とあるだけで材質は記載されていません。雨水溝は道路側溝でよく見かけるセメント製のU字溝のようなものです。当時はセメントもありませんし、石灰岩をU字溝に加工する技術もありません。また石灰岩や大理石の比重は2.7。仮に幅88cm×長さ880cm×厚さ22cmの石灰岩のパネルを作ってそれを屋根に相当する部分に乗せたとします。すると1枚のパネルの重量は4.599tになります。いくら材木が頑丈でもこの重量には耐えられません。神殿を描いた画像を見ると屋根は合掌作りではなく平です。これだけけの重量の石板が木製の梁や天井部分に渡された材木で支えれらる強度はありません。つまりソロモン神殿の屋根は厚い材木で覆われていただけと推測できるのです。さらにイスラエルの様な1日の寒暖差があり降水量も多い気候帯では石灰岩は不向きです。亀裂が生じたり雨水で削られる可能性が高いのです。一旦上に乗せた石板を交換するなどクレーン車でもない限り到底無理です。