列王記第一3章-3
列王記第一3章-3(3:5-15)
=本章の内容=➌ソロモンの夢
=ポイント聖句=5,ギブオンで主は夜の夢のうちにソロモンに現れた。神は仰せられた。「あなたに何を与えようか。願え。」
15,ソロモンが目を覚ますと、見よ、それは夢であった。彼はエルサレムに行き、主の契約の箱の前に立って、全焼のささげ物を献げ、交わりのいけにえを献げ、すべての家来たちのために祝宴を開いた。
BC999誕生・BC970国王即位・BC960神殿建立・BC931死亡
➌5-15節:ソロモンの夢・・・この個所はダビデが生涯において預言者(サムエル・ナタン・ガド)を介して主の御心を間接的に知ったこととは対照的に夢によってソロモンへ主なる神様が語り掛けてくださったとされる部分です。ところでソロモンが夢の中で主なる神様の御声を聞いたという物語を「ソロモンの信仰の発露」と捉えることに私はとても違和感を覚えます。確かにソロモン以前や以降に主要な人物が主の幻(夢を含む)によって様々な指針を示されたことがありますが、ここで見たソロモンの夢はソロモンを心地よくさせるものではありましたが、「特別な指針」と言う部分はどこにも見当たりません。サウル(占い師により幻覚を見せられたことはあります)やダビデには「夢を見た」という体験がありません。またサウルとダビデは祭司を通して「主に尋ねる」ことがありましたがソロモンにはこの経験がありません。そもそも夢は夢を見た本人しか確証はできません。つまり主なる神様が本当にソロモンに語ったのかはどうかの真偽のほどは本人しか確証しえないのです。現代科学でこの話を括ってしまうのはとても味気ないのですが、私にはこの夢はソロモンのストレスの原因と願望によって作り上げられたものと思えてならないのです。「9,善悪を判断してあなたの民をさばくために、聞き分ける心をしもべに与えてください。さもなければ、だれに、この大勢のあなたの民をさばくことができるでしょうか。」とあるのはソロモンが持っている最大ストレスだったのでしょう。イスラエル12部族を統率するのは並大抵のことではありません。そしてその主なる神様からの回答として「12,見よ、わたしはあなたが言ったとおりにする。見よ。わたしはあなたに、知恵と判断の心を与える。あなたより前に、あなたのような者はなく、あなたの後に、あなたのような者は起こらない。」とありますが、このギブオンでの一大イベントが成功したことでイスラエルの統率者として大きな自信を持てた潜在意識がこの回答を生み出したとは言えないでしょうか。「15,ソロモンが目を覚ますと、見よ、それは夢であった。」と作者はわざわざ「見よ、夢であった」と記す所から察すると「客観的確証はないが・・・」との意味を舌下に含んでいる気がしてなりません。蛇足になりますがソロモンは68歳で亡くなります。ダビデ(70歳)やサムエル(88歳)や他の指導者から比べると決して長寿とは言えないのです。
語句①夢(5):英語dream;ヘブル語へローム[夢]・・・夢を見る理由は諸説ある。人間が日常生活で起きた出来事や脳に蓄積したあらゆる情報を脳内で一度整理するために夢を見ると言われている。睡眠中には、眼球が活発に動く「レム睡眠」という状態の時間がある。…レム(REM)はRapid Eye Movement(急速眼球運動)の頭文字現実離れした奇想天外な夢は、このレム睡眠の最中によく見るらしい。しかしレム睡眠では身体は休んでいるが脳は覚醒しているので眠りが浅い状態。レム睡眠は日常的な連続したストレスが蓄積している時や大きなストレスが発生した時に起こりやすい。悪夢を見るのはストレスにより体調不良を起こしている場合、良い夢を見るのはストレスから解放された場合に見るとされている。また夢を見てから10分後に覚醒するとその夢を覚えているとの実験結果がある。このことから考えるとこのソロモンが夢を見たのはギブオンでの大きなイベントによるストレスからようやく解放されて心地よい状態とも言える。
※幻(Ⅱサムエル7:17):英語vision;ヘブル語ヒェザヨーン…睡眠時に見る画像や音声を夢、覚醒している時に見る画像を幻とする場合が多い。
【旧約時代に幻(夢を含む)を見た人物と聖書箇所】
人名 | 聖書箇所 |
アブラハム | 創世記15:12 |
アビメレク | 創世記20:3-7 |
ヤコブ | 創世記28:12-15 |
ラバン | 創世記31:24 |
ヨセフ | 創世記37:5-10 |
ファラオとそのしもべ | 創世記40:5、41:1-8 |
ミディアン人 | 士師記7:13 |
ネブカデネザル | ダニエル2:1、4:10-18 |
※上記の様にリストにしてみると、創世記の居並ぶ偉人達であることが分かる。「ソロモンが夢を見た」と言うことで、ソロモンを偉人列伝の一人に祭り上げている様な感じさへしてくる。