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列王記第一2章-2

列王記第一2章-2(2:13-25)
=本章の内容=

❷誇大妄想に陥るアドニヤ❸アドニヤの処刑

=ポイント聖句=

15,彼は言った。「ご存じのように、王位は私のものでしたし、イスラエルはみな私が王になるのを期待していました。それなのに、王位は転じて、私の弟のものとなりました。主によって彼のものとなったからです。

22,ソロモン王は母に答えた。「なぜ、アドニヤのためにシュネム人の女アビシャグを願うのですか。彼は私の兄ですから、彼のためには王位を願ったほうがよいのではありませんか。彼のためにも、祭司エブヤタルやツェルヤの子ヨアブのためにも。」

=黙想の記録=

❷13-18節:誇大妄想に陥るアドニヤ・・・アドニヤの謀反は完全に失敗したのです。しかしダビデの生存中はアドニヤに対して何の処罰も加えてはいません。また次期国王のソロモンにもアドニヤについて何の指示も示唆も与えていないのです。これがダビデの以前からの弱点です。アムノンのレイプ事件、アブシャロムのアムノン殺害事件に関してまるで他人事のように過ごす時があったのです。身内の不祥事に関してダビデはいつでも客観的な姿勢を取れなかったのです。「主なる神様が裁定を下されるのを待っていた」とするのなら、第三者(預言者や祭司そして族長たち)を召集し積極的に御心を求めれば良かったのです。信仰者として当然とるべき態度を取らず、「時間が問題を解決する」かのように無為無策に時を過ごしていたのです。この無為無策の時間がアドニヤに「自分こそ後継者である」との幻想をより増長させるのです。自分に処罰が加えられないのは12部族の族長たちやダビデの重臣たちがまだ自分を支持しているから、また民衆も未だに自分を支持していると大きな錯覚を抱いていたのです。更にこの時点で自分を支持してくれたヨアブ将軍や祭司エブヤタルも処罰されていなかったことがこの錯覚に拍車をかけていたと思われるのです。アドニヤのこの症状は現代流に言うなら自己の能力や資質の優位を過剰に信じ込む『誇大妄想』です。妄想性障害、統合失調症、躁状態などで出現すると言われています。この誇大妄想に陥るにはその症状に至る要因があるものです。そもそもアドニヤが謀反を起す動機となったのは当時アドニヤが「①実質長男で家督を継ぐ資格があるという律法による裏付け②ヨアブ将軍や祭司エブヤタルが後ろ盾」があったからです。多少の根拠がなければ誇大妄想には陥らないのです。アドニヤは処罰されていないのを良いことにとんでもない計画を企てるのです。それはごく最近までダビデ王に仕えていたアビシャグを自分の妻にするというものです。―ここからは全く私の想像です―アビシャグは実質ダビデの最期の側室でした。このまま彼女を野放しにしておけばソロモン政権にも影響を与える可能性が多分にあるのです。なんせ彼女は全イスラエルから選び出された絶世の美女で、相当のプライドがあったはずでこのまま隠遁生活を送る輩とは思えません。「ダビデとの最期のしととねでダビデが約束していたことがある」という爆弾発言をし自分の立場をソロモン政権下で有利なものにしようという野心を遂げようとする可能性もあるのです。つまり「ソロモンやバテ・シェバにとって未だに処分できない目障りな存在である」とアドニヤは勝手に思い込んだのです。アドニヤがこともあろうに現王の母バテ・シェバの元に出向いたのは、「バテ・シェバがこの若くて美人なアビシャグに少なからず嫉妬心と劣等感を抱いており、早くこのうっとうしい蠅を追っ払って欲しいと願っている」と思い込んでいたからです。「アビシャグを自分の妻に迎える」と進言すれば問題解決になるとアドニヤは踏んでいたからです。「15,ご存じのように、王位は私のものでしたし、イスラエルはみな私が王になるのを期待していました。それなのに、王位は転じて、私の弟のものとなりました。主によって彼のものとなったからです。」のアドニヤの巧みな誘導はバテ・シェバの心を一時捉えてしまったようです。「主によって」と言う言葉は「自分の国王宣言が先走ったものであり、主なる神様の御意志がそれを阻止された結果である。したがって自分にはこれ以上野心を実行するつもりはない」という誓いとしてバテ・シェバには受け取れたのです。確かにヨアブ将軍や祭司エブヤタルも処分が決まっていない不安定な状況下でしたからバテ・シェバには説得力があったのです。バテ・シェバはソロモンに進言することを約束してしまいます。

❸19-25節:アドニヤの処刑・・・20-22節のバテ・シェバとソロモンのやりとりはバテ・シェバの無頓着ぶりとソロモンの賢明さを際立たせています。バテ・シェバはアドニヤの要求の背後にある動機を認識していませんでしたが、ソロモンにはアドニヤの本当の動機が端から分かっていました。「22,何ですって? 気がおかしくなられたのですか。アビシャグをアドニヤに与えるとは、王国を与えたも同然ではありませんか。彼は私の兄です。そんなことをしたら、彼は祭司エブヤタルや将軍ヨアブと組んで、私を出し抜くに違いありません。(リビングバイブル)」バテ・シェバはアブシャロムがダビデのハーレムを乗っ取った時のことを失念したのでしょうか。最後の側室アビシャグと婚姻を許可するということは内外にダビデの王権はアドニヤに引き継がれたことを宣言したのも同然なのです。アドニヤは条件付きの慈悲の処置が付されていたのです。ソロモンは、分限を超えた言動をすれば自分の死につながると警告していたその警告(Ⅰ列王記1:52)をアドニヤ自ら破ったと判断したのです。『23-24王は激しく怒り、「反逆を企てたアドニヤをこの日のうちに始末しなかったら、主が私を打ち殺してくださるように。父上の王座を私に与え、約束どおり王国を確立してくださった神にかけて誓う」と言いました。』ソロモンは臣下のいる所でアドニヤを処刑するよう明言しました。父ダビデはアドニヤの謀反を親子であるが故にアブシャロム同様結果的には黙認しましがソロモンは容赦しませんでした。血肉のつながりより政権維持を重要視する冷血なソロモンの一面が吐露される部分でもあります。アドニヤの浅薄な計画は潰えました。誇大妄想に憑りつかれた哀れな男の最期でした。

列王記第一

Posted by kerneltender