列王記第一1章-1

列王記第一1章-1(1:1-10)
=本章の内容=
❶死期に向かうダビデ王❷アドニヤの造反事件
3,こうして彼らは、イスラエルの国中に美しい娘を探し求め、シュネム人の女アビシャグを見つけて、王のもとに連れて来た。
8,しかし、祭司ツァドクとエホヤダの子ベナヤと預言者ナタン、それにシムイとレイ、およびダビデの勇士たちは、アドニヤにくみしなかった。
❶1-4節:死期に向かうダビデ王・・・老齢になると体温調節機能が衰えてくるのは①皮膚表面にある温度センサーの感度が弱る②血流の滞り③体内水量の減少④認知症による自律神経障害が考えられます。ダビデの老後は戦士として活躍した青年時代の無理が祟り体はボロボロになっていたものと推測されます。また初老の頃の子供たちの度重なる不祥事で心労が重なるばかりだったのです。主の前に犯した大罪が心の病に影響を及ぼしていたものと思われます。体温調節ができないくらい健康を損なっていたのはこれらが原因なのです。当時の医学的知識では暖を取るために若い女性に添い寝をさせるくらいの方法しか考えつかないのです。つまり24時間常にダビデに張り付く非常に若い女性をあてがったわけです。ヘブル語で見ると「側室」でもなくただの「召使」とありますが、後にアド二ヤがバテ・シェバにアビシャグを自分の妻として迎えたいとの要望を伝えた(2:2-22)ところからするとダビデの寵愛を受けたものとして相応の取り扱いを受けていたものと思われます。しかしダビデはアビシャグシュと性的関係を持つことはありませんでした。無論死期の近い老人であったことだけではなく、アムノンやアブシャロムの一軒の様にこれ以上骨肉の争いを引き起こす災いの種を作り出すことに懲りていたからなのです。バテ・シェバの一件で主なる神様の前に性的な女性関係を避けようと決心したからかもしれません。シュネム人の女アビシャグの側に立って考えてもみてください。現国王とはいえ死期に近づく老いぼれのダビデの召使に何の魅力があるでしょう。ダビデの傍を24時間片時も離れることができない謂わば軟禁状態の人生を強いられるのです。恐らくダビデの死後は側室同様の取り扱いとなるのです。ダビデは最期まで女性を一人の人間として取り扱うことができなかったのです。
❷5-10節:アドニヤの造反事件・・・アドニヤはダビデとハギテの間に生まれたダビデの4男でこの時推定33歳。母親ハギテは「美しい踊り子」との情報以外は皆無です。「アドニヤ=私の主はエホバ」と名付ける所から生粋のユダヤ人ではと思われます。ソロモンの母バテ・シェバもユダヤ人です。この点では差異がありませんが、アドニヤの母ハギテは踊り子でバテ・シェバはダビデの生活支援をしてくれたアンミエルの娘でありまた一説には軍司アヒトフェルの孫娘とされています。これが事実なら「氏育ちが違う」のです。またバテ・シェバにはソロモン以外にも4人の息子がいたことからするとバテ・シェバはダビデの偏愛の対象でした。ソロモンの王位継承についてダビデとバテ・シェバとの間に結ばれていた密約ができていたとしても不自然なことではありません。この密約をアドニヤもヨアブも祭司エブヤタルも周知の事実だったのでしょう。ヨアブの場合、ダビデ王との確執が以前からあったのに加え、ダビデが犯して来た大罪(①バテシェバ事件②人口調査事件)はヨアブの正義感による許容範囲の限界を超えていたと思われるのです。「民の平安を願うより自分を大事にするダビデは国家を率いる王として相応しくない」との結論を出していたのです。ソロモンが即位する前にそしてダビデが健康を害し衰弱している今を置いて事を起こすことができないのです。アドニヤもヨアブも祭司エブヤタルもそう感じ取っていたのです。「5, ・・・戦車、騎兵、それに自分の前に走る者五十人を手に入れた。」を準備するところはアブシャロムの動きを正に模倣しています。また母親似であるとすれば相当の美男子でこれもまたアブシャロムを彷彿とさせます。「9,アドニヤは、エン・ロゲルの近くにあるゾヘレテの石のそばで、羊、牛、肥えた家畜をいけにえとして献げ、王の息子たちである自分のすべての兄弟たちと、王の家来であるユダのすべての人々を招いた。」とあります。「ゾヘレテ」のもともとの意味は「這う、盗む」です。作者がわざとこの「ゾヘレテ」の言葉を挿入したと思われるのです。ソロモン以外の兄弟が皆集まったとするなら、彼らもまた同罪です。この兄弟たちもバテ・シェバとダビデの密約を知らないわけがありません。しかし今回の儀式にはヨアブ将軍や祭司エブヤタルが後ろ盾となっていたのはアブシャロムの時とはだいぶ異なるのです。ですからこの点を安心材料として招待に呼応したものと思われるのです。「8,しかし、祭司ツァドクとエホヤダの子ベナヤと預言者ナタン、それにシムイとレイ、およびダビデの勇士たちは、アドニヤにくみしなかった。」神託を受ける預言者ナタンとべナヤ他多くの勇士はアドニヤの呼びかけに応えることはなかったのです。老齢になってもダビデは未だに国王です。国王の命がなければアドニヤに同調して行動すれば反逆罪となるのです。それだけでなく、老害となっているダビデではあっても主なる神様の許しなしに王権を移譲することは主なる神様への反逆罪となることをこれらの人物は心得ていたのです。一見すると健全な考えと思われる「人間的観点・人間的選択」の側に立つことは主なる神様の御心ではないのです。
=注目語句= 語句①シュネム人(3):英語Shunammite;ヘブル語シュナッティー [二重の休息地] =注目地名= 地名①エン・ロゲル(9):英語En-rogel;ヘブル語エン・ロゲル[満ち足りた泉・泉の様なところ]・・・エルサレムのダビデの町の真南にある泉または小川の流れている場所と推測されている。(Ⅱサムエル17:17)
地名②ゾヘレテ(9):英語Zoheleth;ヘブル語ゾへレス[蛇(転がっている)]の石] =注目人名= 人名①アビシャグ(3):英語Abishag;ヘブル語アビシャグ[私の父は放浪者]